失われゆく「観察力」を求めて

先週末に「こども成育インストラクター《食専科》」第8期が開講しました。

 

昨今の状況から今期は全講義をオンライン受講のみといたしました。

 

朝9時半から夕方18時までの長時間、密度の濃い講義が続きます。

オンラインで受け取るには大量のボリュームです。

 

講師の先生方も、これまでとは違いカメラに向かって講義をするという慣れない環境でした。

 

けれど、こういう時期だからこそ学びを深め、育児に不安を抱くお母さまやお父さまに

寄り添える存在でありたいという熱い想いにあふれた2日間になりました。

 

「こども成育インストラクター《食専科》」のベースとなっているのは

沢井佳子先生の長年の研究の蓄積である『こども発達スケール』です。

 

0歳から12歳までのこどもの発達段階で現れる行動・状態・コミュニケーションの目安の総覧であり

これは沢井先生がこどもを観察し続けた膨大な量のローデータに基づいています。

 

そして講座のなかでも、こどもを観察するための知識やスキルをお伝えしています。

 

一方で、受講生のみなさんとともに講義を聴講していて毎回印象に残るのは

こどもたちがいかに親を観察しながら成長、発達しているかということです。

 

講座の主幹となる講義である沢井先生の『こどもの心理発達』のなかに

「愛着と注意と模倣」というパートがあります。

 

こどもが大好きな人(身近な養育者)に注意を向け、観察し実行する(模倣する)という力は

ヒトに生まれつき備わっている力です。

 

たとえば、2歳にもならないこどもが、パパのスマートフォンを操作して動画を

いつの間にか観ていることがあります。

 

これも、こどもはパパがどのようにスマートフォンを操作しているのかを日ごろから注意深く観察し

それを模倣していることから起きる現象です。

 

観察しているからこそ、沢井先生曰く

「こどもは大人が考えるほど成長するために試行錯誤はしていない」のです。

 

 

では、大人はどうでしょうか。

 

年齢を重ね、経験を積むにしたがって、この生まれつきもった「観察する力」を

失ってきてはいないでしょうか。

 

やはり講座のなかで、このことを痛感させられるお話が出てきます。

 

2日目の瀬尾知子先生の『こどもの食行動』の講義の終わりでは

動物園のシロクマの「食事タイム」の様子を瀬尾先生が撮影した動画を紹介しています。

 

水中に仕掛けてある餌を手で器用に引き上げながら食べているシロクマ。

 

豪快に水の中にもぐって餌をとるという期待するイメージとはまったく異なる姿です。

 

「期待外れ」という声が多くあがるなか、食事タイムが始まる前からシロクマを観察していた瀬尾先生は

「きっと水にはもぐらない」ということがわかっていたとお話しされます。

 

なぜなら、その前にさんざん水の中でシロクマは遊んでいて

そのあと陸にあがりすっかり毛づくろいをすませていたから

わざわざもう一度水に入るようなことはしないだろうと。

 

観察していたからこそわかる、行動の理由です。

そして、その理由がわかれば「期待外れ」というネガティブな気持ちは

湧いてこないということがよくわかるエピソードです。

 

 

日々、忙しくしている私たちは、こうした「時間をかけて観察する」という行動を

ないがしろにしがちです。

 

そして、自らの思い、期待だけを相手にぶつけてしまいます。

 

これは、育児、親子関係だけにかぎらず、夫婦間、友人、職場の人間関係など

コミュニケーションが発生するあらゆる場面で起こることです。

 

それをまず正すこと。

 

だれもが生得的に身につけている「観察力」を再び呼び起こすことも

講座の目的の一つとなっていると言ってもよいかもしれません。

 

 

折しも今、24時間、家という限られた空間にいることを余儀なくされています。

 

そんなときだからこそ、冷静に、そして客観的に「観察する」ことが

必要とされていると感じます。

 

先日リリースした『オヤトコ診断』もそうした観察力をサポートするツールです。

 

お母さまやお父さまがこのアプリを使用していただくことで、その時その時の自分の子育てと

こどもの育ちを客観的に観察する意識が芽生え、建設的な親子関係の構築へ導いていきます。

 

オヤトコ診断はこちら

 

今後も協会では、こうした「観察力」をサポートするコンテンツを数多く生み出してまいりたいと思います。