げんきをつくる食卓「食べる力の向上を①」

この4月より、「こども成育インストラクター講座<食専科>」のディレクターであり、「健康食育」の講座も担当している隅弘子先生が、月刊誌『こどもの栄養』(公益財団法人 児童育成協会発行)にて、連載をしています。


児童育成協会様にご快諾いただき、連載の内容を当協会でのブログでも公開することになりました。「こども成育インストラクター講座<食専科>」をベースとした連載ですので、本講座のエッセンスがギュッと詰まっています。


げんきをつくる食卓
成長と発達を見守り食べる力の向上を
―『こどもの栄養』平成30年5月号 第749号-

保育園、幼稚園の保護者の方々が、この時期にふともらす言葉です。
「はじめての園生活慣れたかな?」
また、進級したこどもの保護者は「1年間でずいぶん成長したな!」と。
保護者の方も心配や期待がわいてくる時期ですね。

今回のテーマは、こどもの成長を感じる季節として「食べるステップ」をこどもの成長・発達の視点からお伝えします。

ヒトは生まれてから死ぬまで様々な段階を経て、周囲の環境に適応するための「認知(わかること)」や「行動(ふるまい)」を形成します。そうした変化、及びその過程を「発達」と呼びます。

それに比べて「成長」は身長や体重が増えるなど量的に大きくなることを指します。従って、普段の会話の中で「成長したな~」と感じることは、「発達した」ことを指す場合もあります。

◆「好き嫌いがある」ことはいけないこと?

先月号掲載の平成27年乳幼児栄養調査(厚生労働省)の中でも未就学児のこどもの食事に困っていることに全対象月例で3割前後のお母さんが「偏食する(=好き嫌い)」と回答しています。

「離乳食期は何でも食べていたのに最近好き嫌いが激しくなった」
「相変わらず緑のお野菜を食べないです」
「離乳期のこどもはなんでも食べてくれてうらやましい・・・」

と、お母さんたちのため息が聞こえてきます。

幼児期における「好き嫌い」は、成長と発達の過程で、誰にでも出てきます。その理由をこどもの「成長と発達」という視点から考えてみましょう。

*好き嫌いが出てくる頃の成長と発達
① 成長:乳歯が生える、上下噛合の形成、乳歯列が完成する。
② 発達:味覚の形成、好きか嫌いかを判別する。

つまり、好き嫌いは成長と発達の一部として誰もが通る道であり、発達の過程で、好みの認識や味わうことが増えると起こるのです。

◆「やってみよう」「失敗しよう!」を応援

こどもが一人で立ち歩けるようになった日、とても感激されたのではないでしょうか。とはいえ、こどもは、ある日突然、歩くことができたでしょうか?

まず、寝返りをうつ。ハイハイをする。つかまり立ちする。2、3歩歩くようになる。というように、多くの順序を踏んでから自立歩行となるのと同様に、食事の面でも順序を経て「食べる」という技術を身に着けていきます。

例えば「一人で食べられるようになる」の順序のひとつである「手づかみ食べ」をみてみましょう。離乳期のこどもについて、大人に与えられていた時期から、自分で食べようとする意欲が育つように支援することを考えてみましょう。1歳前後に始めることが多いと思います。

発達のステップの段差(できるレベル)、期間は個人差がある

*「手づかみ食べができる」までの順序

①  目で食べ物を負うことができる(追視)。
②  その食べ物へ向けて、手をさしのべることができる。
③  食べ物のある位置との距離を測ることができ、手で触ることができる。
④  触った物をつかみ、その手で口元まで運ぶことができる。
⑤  口元にきた食べ物を見て、その食べ物が入る大きさに口をあけることができる。

「手づかみ食べ」は日々の練習の賜物であるとして、辛抱強く見守ってあげてほしいのです。

げんきをつくる食卓 保護者支援のためにー成長と発達を見守り食べる力の向上を②につづく