げんきをつくる食卓 保護者支援のために-なぜ5歳までの食事が大切なのか? -幼児期に育みたい食習慣と食事の軸を考える①

4月より、「こども成育インストラクター講座<食専科>」のディレクターであり、「健康食育」の講座も担当している隅弘子先生が、月刊誌『こどもの栄養』(公益財団法人 児童育成協会発行)にて、連載をしています。

児童育成協会様にご快諾いただき、連載の内容を当協会でのブログでも公開することになりました。「こども成育

インストラクター講座<食専科>」をベースとした連載ですので、本講座のエッセンスがギュッと詰まっています。

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この連載において、前半では子どもの発達と食行動の観点より、とくに「大好きな人(保育士・養育者・お友達)」と「自分」と“一緒に”前向きな気持ちで食べる環境づくりの重要さをお伝えしてきました。後半はご家庭で実践するためのアドバイスを中心にステップアップいたします。保育所等から保護者へ伝えていただきたい内容をお伝えします。

 

 

◆幼児期までの食事・食習慣が「げんき」を育む土台となる

 

 

人は健康に過ごすために毎日の「食事」が重要であることは、大人でも子どもでも同様です。特に大切な成長・発達期である未就学前の子どもの食事は、健康に過ごすことはもちろん、大人にはない大切な目的と役割を担っています。

 

人間が生後、様々な機能が成長・発達する度合いを、20歳を100パーセントとして年齢ごとの度合いを示したのが、スキャモンの発達・成長曲線です。

 

一般型とは、身長や体重など身体が大きくなるということに加えて呼吸器や消化管などの内臓の発育を示した曲線です。3歳までに急成長する最初の山があります。生まれたときの体重は、1歳で約3倍、2歳で約4倍に増え、身長は1歳で約1.5倍、4歳で約2倍にのびます。このことからも身体をつくるための栄養が必要になります。

 

神経型とは、脳や脊髄といった中枢神経や、視覚と中枢神経が関連するよう発育することを示した曲線です。神経系は発育が早く、生後すぐに急激な上昇カーブを描き、5歳くらいのころにはすでに80パーセント程度に達するとされる成長曲線を描きます。毎日が発見と練習の日々と常に脳を活発に発達させながら、成長していくために必要な栄養が求められます。

 

リンパ系型とは、リンパ節などのリンパ系組織の発達や免疫系の発育・発達を示している曲線で、12歳まで伸び続けてから100パーセントに落ち着きます。このように生まれてから5年間、つまり5歳までは、身体を急成長させる時期なのです。それは大人とは比較にならないほどのたくさんの栄養が必要な時期であり、食事によって必要量を摂取することが重要です。身体の成長に必要な栄養素として肉・魚・卵・大豆食品などといったたんぱく質をとるべきだという認識度は高いのですが、それ以上に「げんき」の主役となる栄養素が炭水化物であるということを理解し、実際の食事に活かしていただくことがより必要です。

 

現代は、健康的な食事の視点(肥満予防)として「食べすぎないように」炭水化物を減らす傾向が高い家庭が増えています。このような背景により、急成長する幼児期には必要な量を摂取しようと子どもの身体が欲しているにもかかわらず、大人の解釈で「うちの子は炭水化物ばかり食べているのでこのままだと太ってしまう」と「食べ過ぎる」という悩みにまで発展してしまうケースが増えているように感じます。

 

**「食事バランスに気をつける」の本当の意味はエネルギーを枯れさせないこと***

■東京都幼児向け食事バランスガイド

~子供と一緒に食を育もう~

 東京都幼児向け食事バランスガイド

 

厚生労働省「乳幼児栄養調査(平成27年度)」では、「子どもの食事で特に気をつけていること」について「栄養バランス」と回答した保護者が72パーセントにもあがりました。ではその具体的な栄養バランスをどう捉えているのでしょうか?

 

「野菜をたくさん食べさせないと」「牛乳をしっかり飲ませないと」など具体的な食材をあげて回答する傾向が高いように思います。コマの形をしたバランスガイドの図からも、食事を通して主として何を必要としているのかをはじめにバランスを意識する軸を忘れないで欲しいと思います。

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◆子どもの食事の基本(栄養)は「エネルギー」を中心に考えてみよう

 

幼児期に育みたい食習慣を形成するのに必要な「何を食べるか」については、沢山のエネルギーを消費した後にしっかりと補給できているかを意識することが大切です。

 

毎日「発見プラス考える・試す」が連続の幼児は知育・体育活動においてたくさんのエネルギーを必要としています。この時期のエネルギー量の不足は適正な成長の足かせになります。だからこそ適正な食事の提供が大切なのです。

 

とはいえ、乳幼児期の子どもの胃は、大人の胃の大きさに比べればまだまだ成長発達段階。食事の提供の方法に配慮する必要があります。1日3食の食事も大切ですが、間食も食事の一部として考え、1日に3回から5回(間食2回)の食事には、消費されるエネルギーに対してすぐ補えるように、よく燃えて、負担の少ない食材を食べやすく調理して提供することが大切なのです。

 

 

5歳までの食事

=成長・発達に必要なエネルギー + こころと身体をげんきに保つエネルギー

 

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