「こどもの発達」をどう見分けるのか―「オヤトコ診断」開発ストーリー(1)

日本こども成育協会では、今年3月にこどもの「今」と親子関係の傾向を把握する

Webアプリ「オヤトコ診断」をリリースしました。

 

リリースより約半年が経ちましたが、これまで多くのお母さまやお父さま方にご利用いただき、

実際にお使いになってのご感想やご意見も承りながら、さらなる改良に取り組んでいるところです。

 

特に「おうち時間」が長くなっている今、親子で過ごす時間をより豊かにするため、

多くのご家庭でご活用いただけますよう、普及に努めたいと考えております。

 

そこで今月より、本アプリの監修・開発者の「オヤトコ診断」開発ストーリーをご紹介してまいります。

 

第一弾は、まさに「オヤトコ診断の生みの親」である協会理事の沢井佳子先生のお話です。

 

こどもの認知発達と視聴覚教育メディア設計の専門家として、

数々の幼児教育シリーズの本・ビデオ・玩具をはじめ、テレビの幼児教育番組の監修やコンテンツ開発に

携わっていらした沢井先生は、当協会の「こども成育インストラクター資格認定講座」および

「こども成育講座」の総合監修者でもあります。

 

日本こども成育協会が制作、発信しているコンテンツは、沢井先生の長年の経験と

国内外の研究データが蓄積された「こども発達スケール®」をベースにしており、

「オヤトコ診断」も例外ではありません。

 

「こども発達スケール®」とは、0歳から12歳までの発達の進行を、年齢(月齢)を目安にして、

発達のさまざまな側面の変化を記述したものです。

 

認知能力の7つの領域(言語・論理・数量・図形・自然・社会・表現)で見られる行動や思考の様子と、

感覚(五感)の発達の特徴、そして、身体の運動機能の特徴をも記述しています。

 

「わかること」「できること」がどのような順序で、どのようなところに現れるのかを示したものです。

 

いわば「発達の道しるべ」といえるものです。

 

 

では、「こども発達スケール®」は、どのような必要から作られたのでしょうか。

 

その背景から沢井先生に伺ってみました。

 

 

 

―「こどもの発達」をどう見分けていくのか

 

 

 

 

沢井:こどもの発達をみるとき、「どのような能力が伸びたのか、どんな分野が得意なのか」は

誰もが自然に関心を持つことでしょう。

 

特に保育園や幼稚園に通うようになれば、『物知りのチカちゃん』『お世話好きのタカシくん』というように、

先生方がお子さんを評価なさるものですし、子ども同士も、3~4歳ころには、お互いの得意不得意を

認めあっています。

 

では、具体的にどのようにこどもたちの能力、得意不得意を見分けていくのかというと、

実は“ズバリこれだ!”という方法があるわけではありません

 

なかなか解決していない問題なのです。

 

「生まれつき社交性が高い」といった生まれもった気質というのは確かにあるのですが、

気質テストをして、「この子はこういう気質です」と断定することは、

そのお子さんの発達に役立つかというと、必ずしもそうとは言えません。

 

逆に制約を与えてしまう、「この子はこういう子だから、これはやらせなくてもいい」という

偏見にさえつながってしまう危険性もはらんでいます。

 

こどもには大人の想像を超える柔軟性があり、生まれながらの気質とともに、

幼児期にどのような刺激を受けたのか、どんな遊びをしたのか、どういった人たちに囲まれて

成長したかで、柔軟に能力が変化していくのです。

 

日本に生まれれば日本人らしくなるし、フランスに生まれればフランス人らしくなるというように、

環境の影響というのはとても大きいのです。

 

私が、幼児教育の映像や教材等の制作に携わるようになった当初、こどもの得意な点を伸ばすことはもちろん、

「今はあまり関心がなくて、得意とは言えない分野も伸ばしていくこと」をサポートするため、

「幼児期からまんべんなく、こどものいろいろな才能を刺激するようなもの」をつくりたいと考えていました。

 

しかしながら、当時の幼児教育の市販教材は、「もじ・かず・ちえ」といった項目で分類されただけの、

おおざっぱな教育内容のものがほとんどでした。

 

これは、幼児の発達についての、大人の「おおざっぱな見方」を反映したものだろうと思います。

 

心理学の研究では、赤ちゃんのときから論理的に判断する能力があるということはわかってきています。

 

けれど、一般には、保護者の方も保育者も、1、2歳のお子さんに「論理の発達」があるとは期待しておらず、

「1歳児むけの、論理を学ぶ遊び」などと申しますと、びっくりされることがしばしばだったんです。

 

心理学での研究と実際の保育の現場では、かなりギャップがあるというのが、当時の正直な実感でした。

 

次回へ続く。