げんきをつくる食卓「楽しい食卓つくりを①」

この4月より、「こども成育インストラクター講座<食専科>」のディレクターであり、「健康食育」の講座も担当している隅弘子先生が、月刊誌『こどもの栄養』(公益財団法人 児童育成協会発行)にて、連載をしています。


児童育成協会様にご快諾いただき、連載の内容を当協会でのブログでも公開することになりました。「こども成育インストラクター講座<食専科>」をベースとした連載ですので、本講座のエッセンスがギュッと詰まっています。


寄り添いながらの楽しい食卓つくりを
―『こどもの栄養』平成30年4月号 第748号-

これから1年間、この連載を通して伝えたいテーマは「げんきをつくる食卓に必要なこと」です。どの家庭でも「楽しい食事を」という想いは持っていることでしょう。しかし、現実はその想いとは裏腹にイライラしたり、怒ってしまうことのほうが日常茶飯事だったりします。

そして怒ってしまった後に、罪悪感にさいなまれています。「食事は楽しく」といつも心がけて頑張っているとしても、頑張るあまり、体力を消耗させ、プチ不調や体力がついていかないなど、心身のバランスを崩しやすいお母さんも増えてきています。子育てに余裕というのはなかなか生まれないのが実情です。

そんなお母さんたちを、私たちはどのように支えていくことが出来るのでしょうか?

◆お母さんたちが「大丈夫」と安心できる支援

厚生労働省平成27年度「乳幼児栄養調査」の結果を見ても、お母さんたちが困っていることは明らかです。月齢によって順位は異なりますが、下記のような結果でした。

Q. こどもの食事で困っていること
2~3歳未満 第1位:遊び食べをする
3~5歳以上 第1位:食べるのに時間がかかる

「こどもたちに楽しい食事を」と頑張っていても、困りごとは次から次へと変わるだけで、なかなか解放されません。「いつになったら一人で食べてくれるんだろう」「いつになったら私は一人で食べられるのかな…」と途方にくれることも多いようです。そんなお母さんに向けて、どのように声がけしたら良いでしょうか?

まずは「大丈夫ですよ」と、そっと手を差しのべてあげられるようなアドバイスが、私たちにできる育児支援の第一歩です。

ただ「成長することで自然とよくなる」といった単純な回答では、今まさに困っているお母さんの問題解決とはなりません。むしろ納得しないお母さんも少なからずいるでしょう。専門的な知識を身につけた方が施設に勤務しているからこそ、「なぜ大丈夫なのか」を、安心する根拠に基づいてアドバイスすることが求められています。

◆お母さんの気持ちに寄り添う

お母さんたちは解答を求めて相談されます。けれど、私たちが相談の答えとしていろいろお話した後の表情が、晴れやかにならない場合があります。それは「理想的な答えよりも、同意や共感を求めている」ということの表れです。

情報あふれる世の中、知識をまったく持たず子育てをしているお母さんはほとんどいません。むしろ専門家でも知らないような知識なども簡単に知り得る時代です。

またママ友同士でも、子育ては話題の中心であり、数ある方法の中で、「何が正しいのか、うちの子にはどれがいいのか、どれが楽なのか、どれが安心する方法なのか」を判断したいのにわからなくなったという場合が大半です。お母さんが日々できることからやさしくお伝えしなくては、悩みの解決にはなりません。

私が仕事を通して心がけているのは「お母さんの立場になって寄り添ったアドバイスをすること」です。意識の高いお母さんであれば、栄養学的な知識を活かしたアドバイスとなります。

食事を作るのが苦手、忙しい、食に関心がないといったお母さんもいますし、ご家庭の事情も様々です。食を中心とした生活環境や価値観などを伺い、まずはできるところから一歩踏み出してみることが、こどもの成長発達においても大切なことです。

相談されたときには、お母さんの心の本音とコミュニケーションできるよう皆様の専門的知識とサポートでお応えいただきたいと思います。

げんきをつくる食卓 保護者支援のためにー寄り添いながらの楽しい食卓つくりを②につづく