こどもの能力を見分ける7つの領域とは―「オヤトコ診断」開発ストーリー(2)

前回に引き続き、「オヤトコ診断」開発ストーリーをお届けします。

 

第1回:「こどもの発達」をどう見分けるのか はこちらからお読みください。

 

第2回は、Webアプリ「オヤトコ診断」のベースとなっている「こども発達スケール®」の

7つの領域を設定した理由を、本アプリの監修者沢井佳子先生に伺いました。

 

 

―こどもの能力を見分ける7つの領域とは

 

沢井:前回もお伝えしたように、私が幼児教育の教材づくりに携わりはじめた当時は、

心理学の研究と保育の現場にはかなりのギャップがありました。

 

けれど、私たち心理学の研究者が現場の現状に合わせるのが重要なのではなく、

こども自身の認知の能力を緻密に観察し、「考える力」をできる限り

「まんべんなく促進するサポート」を編み出すことが大事だと考えました。

 

こどもの考える力、思考力全般を「もじ・かず・ちえ」という言葉でとらえることは絶対にできません。

当時の教育雑誌の編集者に「ちえ、とはなんですか?」と尋ねると、

「文字、数以外のものです」という答えが返ってくる始末でした。

 

文字にしても、人類の歴史を考えれば、文字による読み書きやコミュニケーションは、

6万年の歴史のなかで、平均して2000年程度の歴史しかありません。

 

けれど、文字が出現する以前から人間は物事を考え、

声や身振りでコミュニケーションを図ってきたわけですから、

音声言語も含めて「言語」と言い換えたほうが妥当です。

 

また、心理学の分野ではたとえばハーバード大学のハワード・ガードナーが提唱した

「8つの知能」といった多重知能理論(MI理論)などがあり、人間の知的能力の全体を区分し、

それぞれの機能を詳細に記述する試みがいくつかあります。

 

しかしながら、こうした理論の専門術語を私たちが慣れ親しんでいる学校教育の教科名、

例えば、国語や算数といった名称に当てはめようとすると、少し難しいところがあります。

 

もっと、実地に即した言葉で置き換えられないだろうか。

 

そうした観点から厳選していったのが、「言語・論理・数量・図形・自然・社会・表現」という

7つの領域とその名称でした。

 

発達心理学

たとえば「自然」。

こどもが科学的な関心を抱くのは身の回りの自然からです。

 

生物も化学も物理も、すべて自然科学という括りに入れることができます。

 

また、「数量」と「図形」は、算数・数学としては同じ領域として捉えられそうですが、

実は数学者に聞くと、代数的な計算の能力と幾何学的に図形を把握する能力は、

かなり性質が異なる能力だと言われます。

 

もちろん両者の関係性は深いのですが、別々に扱ったほうがよいと判断しました。

「論理」については、一般に数学的なものと考えられがちですが、

たとえば言語学習で文法が理解できるという能力は、論理能力に深く関わります。

 

論理は、言語の基礎であり、数量や図形、自然科学の理解、社会における順番や公平の理解など、

すべての知的な領域の基礎になります。

 

「表現」は音楽や美術、言葉で言い表すこと、身体動作等も含めて「自由に表現する力」です。

 

さらに、人とのつながりは「社会」であり、

たとえば「お友だちとお菓子を半分こして分ける」という行動は

社会性のほかに、友だちとのコミュニケーションを図る「言語」、

半分という量概念を理解する「数量」といった領域にもまたがっていきます。

 

7つの領域は、こどもが学ぶべき課題をバラバラに分割するためにあるのではなく、

それぞれの働きを見分けて、「互いがどのように関連して繋がるのかを見分けるための区別」なのです。

 

このように7つの領域で考えていくと、教材づくりの目的と手続きが非常に明確になったのです。

 

もちろん、0歳から6歳までの教材を手がけ始めた20年前は、

「1、2歳児に対して論理の遊びを!」をうたってもなかなかサポートは得られませんでした。

 

現在は、「AIに負けないこどもを育てる」といって、プログラミング教育が一気に盛んになりました。

 

すると急に「論理を教えるようにしてください」という依頼が増えてきます。

しかし、そうした依頼者は、プログラミングのための論理教育であり、

こどもの社会性の基礎となる論理能力については、ほとんど関心がない…というのが実情です。

 

こどもの教育現場では、こうした偏りがしばし見受けられます。

 

こどもは多種多様な能力や才能を持っているのですから、幼児教育の番組や教材づくりでは、

ある特定の領域に偏るのは防ぎたい。

 

家庭の中の文化的な資産や経済力の有る無しに関わらず、偏った刺激しかない環境で育つこどもにも、

その目の前に、いろいろな領域が見える窓を開けていく仕事をしたいと、私は思いました。

 

この7つの領域をまんべくなく刺激して、「こどもの思考をはぐくむ遊びの仕掛けを創ること」が、

こどもの成育を支える環境づくりになると私は信じて、こども向けのコンテンツ制作を続けてまいりました。

 

第3回に続く

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