楽しい観察が子どもの発達を促すことにつながる-「CHILDSCOPE みてた?」開発秘話3

子どもの成長や発達を動画で記録し、記録した動画を『観察』するWEBアプリ「CHILDSCOPE みてた?」の開発ストーリー、

第3回は秋田大学文化学部 准教授 瀬尾知子先生のお話をご紹介します。

 

第1回:専門家でも気づかない些細な子どもの発達の変化に気づけるように -「CHILDSCOPE みてた?」開発秘話1

第2回:何気ない日常を記録に残すことの大切さ -「CHILDSCOPE みてた?」開発秘話2

 

発達心理学、幼児教育学を専門とされている瀬尾先生は、10年間中学、高校での教職経験を経て、

現在は研究者として子どもの発達や就学前教育に関する数々のフィールド調査を実施されています。

 

日本こども成育協会の『こども成育〈食専科〉』講座でも、「子どもがどう食べるか(食行動)」を観察する重要性、

そして観察から導き出せる食行動の理由とその支援の仕方についての講義を担当いただいています。

 

今回の「CHILDSCOPE みてた?」では、子どもの行動の「観察テーマ」の選び出しや、

実際に撮影された動画へのアドバイスなどを担われています。

 

「CHILDSCOPE みてた?」は、子どもの「小さな成長と発達」に気づく観察力を養える

アプリとして開発されましたが、観察力とはどのように養えるのでしょうか。

 

瀬尾先生:観察力は鍛えれば鍛えるほど、向上すると考えています。

そして、「見ようとしなければ見えない」ものでもあります。

 

私は子どもの頃から山菜採りをよくしていたのですが、同じ山に入っても、山菜が見えない人には見えないのです。

素人はただ漫然と見てしまう一方で、山菜採りのプロは「きっとここにあるはずだ」と予想ができますし、

他の植物と同じような色をしていても見分けることができます。

 

同様に、子育てにおける観察も、どこを見ればよいのか分からなければ不安を感じたり、

過度な期待をしたりしてしまいます。

「CHILDSCOPE みてた?」では、観察のポイントを提示することで、観察力を上げるサポートをしています。

 

また、成長・発達というと、「できた、できていない」という対立で判断してしまいがちです。

そして、そうした二極化で見てしまうと、親の判断もその中で止まってしまいます。

けれど、子どもたちは日々の積み重ねの中で、いつの間にか気づいたら成長・発達しているのです。

 

ですから、撮影するシーンも特別な場面ではなく、毎日の当たり前の生活から切り出しています。

日々のごく普通の様子を面白がって見ることができたら、保護者も子どもも楽しめますし、

こうした楽しさによって観察力もさらに養われていくと思います。

 

観察というと少し構えてしまいそうですが、動画を撮影する際のポイントは?

 

瀬尾先生:構える必要はまったくありません。

また、誕生日などの記念日では、笑顔や喜んでいる様子などを狙って撮影しますが、「CHILDSCOPE みてた?」では

普段のありのままの姿を俯瞰して撮影していただくようにしています。

 

撮影シーンは、子どもの行動のどこを見たら、発達しているのがよくわかるか、という点を考慮して選んでいます。

今回は3歳児版から着手しましたが、たとえば3歳になると食事でもスプーンやフォークを自分一人でうまく使いたいと思い始め、

また実際に使えるようになる時期です。

子どもの気持ちと手先の器用さという発達を関連して見ることができます。

 

そういったシーンを全体的に撮ること、さらに撮影を習慣化することで、気づけることがたくさんあります。

たとえば、食事では、口元やお箸を持つ手を注視してしまいますが、それ以外にも器を支える手、

テーブルの下の足などにも子どもの発達は表れています。

 

また、動画を見比べることで気づけることなども、コメントでお伝えしています。

そうした発見があれば、観察がますます楽しくなるはずです。

 

撮影される側の子どもにはどのような影響があると考えられますか?

 

瀬尾先生:自分の大好きな人が自分のために時間を撮影してくれるというのは、子どもにとって嬉しいことです。

親が撮影して、撮った動画を一緒に見るという行為自体が、「自分は親にとって大切な存在なのだ」という気持ちを生み、

「もう少し頑張ってみよう」という動機にもつながると思います。

「頑張って!」という声がけより、実は大きな効果があるのではないでしょうか。

 

見守られていることで、無理はせずともちょっと頑張ってみようと思う。

その積み重ねが、結果的に発達のスピードを速めることもあると思います。

 

「CHILDSCOPE みてた?」が生活の中で当たり前となって、習慣として根づくことを願っています。

できることも、できないことも含めて、これが自分なのだということを実感し、認めることで

頑張る自信につなげる可能性を持っていると思います。

 

さらに、「どういう風に子どもが発達しているのか」、「保護者はどのような気持ちで見守っているのか」

ということを追ったデータはなかなかありません。

研究者の立場からも、「CHILDSCOPE みてた?」は希少価値が非常に高いデータの収集につながる可能性を感じています。

 

瀬尾知子先生 プロフィールはこちら

 

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次回は、日本こども成育協会代表理事であり、今回「CHILDSCOPE みてた?」の開発を手がけた

株式会社Patata 代表者 羽富孝のストーリ―をご紹介します。

 

■「CHILDSCOPEみてた?」概要

https://childscope.jp/

 

■ニュースリリース

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000106644.html